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「楽天月間MVP受賞しました。」

女たちの大震災〜最新医療が迫る体と心のリスク NHK 当社製品が取り上げられました。

2017.1.17 NHKスペシャル

6434名の命が奪われた阪神・淡路大震災から22年。これまで女性特有の被害に焦点を当てた研究はほとんど行われてこなかった。しかし神戸周辺の拠点病院に残されていた被災直後の「入院患者3500人の診察記録」を分析した医師は、ストレスが多い避難所生活で、女性の方が血栓(血管内の血のかたまり)ができやすいことや、脳卒中を発症する割合が急増していたことを解明。 さらに血栓が体内に残り、発症の危険性が長期間続くことも分かってきた。分析結果をもとに試算すると、体内に血栓が生じていた被災女性は推計1万人、22年たった現在も血栓のリスクを抱え続けている人は少なくないというのだ。
一方、女性の心も蝕まれていたことが分かってきた。被災者への大規模アンケート調査では、「震災を思い出して眠れない」という回答が、一貫して男性よりも高い割合を示している。脳科学の専門家は、災害によって体内に生じるストレスホルモンが制御できなくなり、不安感が長期間消えない女性特有のメカニズムを指摘している。
震災から22年間、心身に潜む危険性に気づかないまま、女性たちは体調不良や不安感と向き合ってきたのだ。
番組では、女性の犠牲に気づかぬまま進められてきた「復興」や「防災」のあり方を問い直し、災害列島・日本で、今後どのように女性の心身を守っていくべきか考える。


足の血管と病気の関連性

・有働由美子アナウンサー(以下、有働氏):私たちを襲う巨大災害。災害時、男性に比べて女性の方がより深刻な影響を受けることが最新の研究で分かってきました。これまで見過ごされてきた女性の体と心のリスクに迫ります。
 1995年1月17日午前5時46分。6434人となった阪神・淡路大震災。30万人以上が避難生活を余儀無くされた未曽有の都市災害でした。
 地震の3日後から被災地に入った私が目にしたのは、過酷な状況に置かれた女性たちの姿でした。

もう生きてることだけで精一杯だったから、水とか食べ物とか今晩寝るところ…言いたいことがいっぱいあって、もう眠れなくて…(声を詰まらせる女性)

・有働氏:避難生活は被災した人たちにどのような影響を及ぼしたのか、詳しい実態が記された貴重な資料が残されていました。地震直後に体調を崩した3500人の入院記録。最新医学の分析で浮かび上がったのは、特に女性で高まる命を脅かすリスク。震災から22年経って初めて明らかになりました。
 地震直後の避難生活でできる血の塊・血栓。それが原因で当時多くの女性が深刻な病気を発症していました。発症のリスクは20年以上経っても続いています。当時、被災した女性の体から今も次々と血栓が見つかっています。

(血栓があるなんて)全然想像しなかった(22年前、被災した女性)

昔あった血栓が原因で急に悪くなって突然死を起こす。時限爆弾のように破裂する(血栓の専門家)

・有働氏:さらに女性が震災のストレスをより強く受けるメカニズムも分かってきました。ストレスをきっかけに分泌される、あるホルモン。脳にダメージを与え、心の病を引き起こすおそれがあると専門家は警鐘を鳴らしています。

ストレス反応が女性の方が高い。恐怖の記憶が強く残って、精神疾患になる(脳科学の専門家)

・有働氏:災害が相次ぐ日本。女性を取り巻く過酷な現実は今も変わっていません。阪神・淡路大震災から22年、初めて明らかになった女性のリスクに迫り対策を探ります。

<注目した「性差医療」という新しい分野>
・有働氏:阪神・淡路大震災で大きな被害を受けた港町・神戸。22年前に私はここ神戸港で被災した人たちを取材しました。誰もが過酷な状況に置かれたわけですけども、とりわけ印象的だったのが、たくさんの荷物を抱えて子どもの手をしっかり握って必死に歩く母親の姿でした。被災した女性たちはその後、どうなったのか。今回の取材で意外なことが分かってきました。
 注目したのは「性差医療」という新しい分野です。これまでの医学は主に成人男性を基準としてしましたが、この性差医療では男女の体の違いに目を向けて病気のメカニズムを解明。性別に応じた病気の治療法や予防法を見出そうとしています。こうした視点で取材を進めていきますと、災害時には女性の方が体や心のリスクが高まるということが見えてきたんです。

<性差医療が解明 “脳卒中”のリスク>
・阪神・淡路大震災の被災者およそ3500人の入院記録。地震直後、避難所から95の医療機関に搬送された人などの具体的な状況が記されている。
・混乱した避難生活の中で突然現れた命を脅かす症状。震災が被災者の体に及ぼした影響が分かる貴重な資料だ。これを分析すると、災害時は男性より女性のリスクが高まる脳や心臓の病気があることが分かってきた。
・今回、入院記録を分析した熊本大学大学院の河野宏明教授。脳や心臓の病気の男女差を研究し、災害の対策に生かそうとしている。

(災害の女性への影響は)殆ど解明されていない。女性の疾患の特徴を解明することが将来的にはその疾患の予防につながる(河野氏)

・河野氏は女性にある病気が目立っていたことに気づいた。脳の血管の障害で起きる脳卒中、通常は男性の方が多く発症する病気だ。ところが河野氏の分析では、震災後の発症率は男性が1.3倍だったのに対し、女性は1.8倍に伸びていた。女性の方がより伸びたのは、これまでの医学では考えがたいという。

非常にびっくりした。女性が格段に伸びたということは、女性の方にそういう影響、ストレス的な影響、地震の精神的な影響が大きく現れた(同上)

・なぜ女性の脳卒中が増えたのは。河野氏は避難生活のストレスによって血圧が急激に上昇したのではないかとみている。強いストレスを受けると、全身の血管に張り付いている交感神経が活性化される。すると血管が締めつけられ血圧が上昇。それが続き脳の血管が破れると脳卒中につながる。
・最近の海外の研究では、この血圧の上昇率には性別によって違いがあることが指摘され始めている。ストレスを受けたときどのぐらい血圧が上がるか。男女の違いを調べたグラフによると、ストレスで交感神経が活性化されるにつれて女性の方が男性より血圧が上昇しやすい結果となっていた。血圧の上昇の違いによって、より女性に脳卒中が増加すると河野氏は考えている。
・震災後、脳卒中で亡くなった大畑ミドリさん(当時52歳)。避難所から病院に搬送されたとき血圧の値は200を超えていた。家族4人で身を寄せた避難所は最大3000人が詰めかけ、ライフラインが途絶えた過酷な状況だった。
・夫はガスの復旧工事で忙しく、大畑さんが一人で家族を支えていた。当時、高校1年生だった娘の知子さん。地震から3か月後、母親に異変が起きたという。

いきなり鼻血がどっと出てきて、なかなか止まらなくて、怖いな、何やろって。「きょう、ちょっと頭痛いねん」みたいな感じやったので(知子さん)

・それから1か月後、母親は避難所で突然意識を失い、搬送先の病院で息を引き取った。子どもたちを不安にさせないよう気丈に振る舞っていた母親。声をあげられずストレスを溜め込んでいたではないかと、知子さんは考えている。

自分がしんどくても何しても子どものために愚痴ひとつ言わないし、文句も言わないし。あのときも全然言わなかった。「地震で助かりました。今から頑張っていこう」ってみんなで言っているのに「はい、死にました」みたいなね。何やったんやろうとって今思いますね(同上)

<命を脅かす“血栓” 22年続くリスク>
・3500人の入院記録から明らかになった、女性で高まる脳卒中のリスク。記録の分析を進めると、女性の命を脅かすもう一つの深刻なリスクが見えてきた。血管にできる血の塊・血栓。災害時の血栓が体に及ぼす影響について長年研究してきた新潟大学病院の榛沢和彦医師。

これ怪しい。呼吸困難、吐き気出現、入院、女性(榛沢氏)

・榛沢氏の分析では、血栓が原因で病気になった疑いがある人は男性38人に対し女性52人。女性が男性を上回っていた。榛沢氏によると、女性の方が避難所で運動不足になったりトイレを我慢し水分を控えたりする傾向があるため、血栓ができやすいという。血栓はエコノミークラス症候群など命に関わる病気につながると警鐘を鳴らしている。

血栓が原因で急に悪くなって、突然死を起こす。女性にやっぱり一番、災害後は起きやすい(同上)

・当時、血栓の疑いがあった52人の女性。そのうちの一人が取材に応じてくれた。神戸市で被災した安川孝子さん。22年前の地震の後で突然倒れ入院した。

倒れたときのことってね、あまり覚えてないのね。ずーっと血が引くような感じでね(安川さん)

・安川さんの入院記録。地震から11日後、突然胸の痛みを訴え意識を失っていた。診断は肺塞栓症いわゆるエコノミークラス症候群だった。家族6人で車中泊をしていた安川さん。トイレの回数を減らそうと、水分を控えていた。
・血管にできる血の塊・血栓。避難生活では特に足にできやすいと言われている。血栓が剥がれると血管を通って体内を移動。全身を巡り、細い血管で詰まると血流が止まって細胞が壊死する。血栓は肺の血管で詰まるエコノミークラス症候群や心筋梗塞などにつながり、命を脅かすおそれがある。
・血栓のリスクは阪神・淡路大震災から22年経った今も続いているのではないか。神戸で調査が始まっている。地震直後、血栓が原因で倒れた安川さんも調査に協力した。この22年、血栓の検査を受けたことはない。
・左足に血栓が見つかった。長さは5cm、血管から剥がれかけていた。

こんなにいっぱい見つかるとは思わなかった。すぐには心配ないけど昔、1回そういうことがあったから(病気に)ならないとは限らないから、一応血液けんさをして1回病院に行ってもらったほうがいい(榛沢氏)

・安川はその後、病院で詳しい検査を受けることになった。

びっくりしているわね。ああいう風に見せてもらったことないからね。私だけ何で(安川さん)

・実は血栓は一度できるとその後もできやすくなることが分かっている。血栓があった場所には痕が残る。すると血液が固まりやすくなり、繰り返しできる場合がある。
・榛沢氏は2004年に発生した新潟県中越地震の被災者を毎年調査してきた。血栓が見つかった女性の割合は全国平均と比べると約2倍の水準で続いていた。地震から長い時間が経っても女性のリスクは続くと榛沢氏は考えている。

一度(血栓が)できると、長々と消えずに残る。治療しても、またできてしまうことが分かってきた。(血栓が)暴れる。時限爆弾のように急に破裂する。大きくなって肺に飛んでしまう、脳梗塞を起こすことはありうる(榛沢氏)

・この日、検査を受けた女性21人のうち足の血栓が見つかったのは8人。被災していない地域の同じ年代の女性に比べ2倍の多さだった。

今回サンプル調査というか限られた人数でしかできなかったので、もう少し大人数でやらないと分からないが(血栓が)消えていなかったり、消えてもまたできた人がかなりいる可能性がある。そういう人たちは、今後新たな病気にならないように、啓発しながら検査をしていく必要がある(同上)

・3500人の入院記録から地震直後に血栓があった女性は、被災地全体で1万人に上っていたと榛沢氏は推計している。震災から22年、女性の体に潜むリスクに今ようやく目が向けられている。
・有働氏:地震直後にできた血栓がまるで時限爆弾のように長年残ってしまう。これは女性にとってとても怖いことです。実際、血栓によってエコノミークラス症候群になった女性は去年の熊本地震でも相次ぎました。熊本県によると入院に必要と判断された54人のうち、なんと42人が女性でした。震災のときに多くの女性に血栓ができてしまう。その現実は今も変わっていません。
 その対策なんですけれども、まずは震災直後の女性のストレスが減るように避難環境を改善することです。そして私たちにも手軽にできることがあります。日本循環器学会は足首のストレッチや、こまめに水分を摂ることを勧めています。また弾性ストッキングは血行をよくして血栓を防ぐことができます。こうした対策は足に血栓がある人でも改善する効果があるんです。

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